Potter:Naoki Kawabuchi
Interview
陶芸家:川淵直樹インタビュー
- December 01, 2018 At Utsuwaya yuuyuu
”僕たちの仕事というのは、まぐれ当たりを狙う仕事なんです。”
時代の器を作ってきた川淵直樹さん。どのようにして幾年も器を創造してきたのだろうか。時代と照らし合わせながら今の川淵直樹さんの器作りに迫る。
ー 作家として活動を始めた70年代というと器はどういう存在でしたか?
川淵直樹:僕らの前の世代というのは、陶芸というと抹茶碗などの茶道具で、器にしても写し(過去の陶芸を模倣した作品)と呼ばれるものが多くて、陶芸は観賞用の作品でした。当時、陶芸のメインストリームは、大きく分けて伝統工芸とオブジェなどの前衛陶芸でした。その埋まっている陶芸の世界にどうやって割り込んでいくかを考えててね(笑)一つは、あまりやってなかった南蛮焼。もう一つは、観賞用の作品を、生活に使える器に戻すということだったね。
ー 今でこそ、陶芸家の器が食卓に並ぶことは珍しくなくなりましたが、当時は少なかったんですね。
川淵直樹:当時、陶芸家の器っていうと、桃山時代の器1客と陶芸家が作った写し4客を5客揃で高価な値段で売られていた時代だからねえ。暮らしの中で使う器といえば、作家の器ではなく、職人が作った器か、工場で大量生産された器が主流だったからね。僕らは、そこに暮らしに使える器を作家として提案したんです。
ー 暮らしに使う器がムーブメントになり、現代まで沢山の器が出てきましたね。
川淵直樹:僕らがやったように陶芸の世界に割り込むためにいろんな作品が生まれて、民藝から派生したもの、日本を超えて海外から派生したものとたくさんの器が生まれてきたね。どんどん陶芸の隙間が埋まっていってね。でもこの埋まってるっていうときは、一番楽しいんだよね。新しいものが生まれるチャンスだから。ここからは、もう少しプリミティブな土偶や土器みたいなものに行くのかな(笑)
ー 今回の焼きあがったの作品も、「揃いもの」「一点もの」を含めて、どれも一つとない、のびやかな作品に仕上がっています。作品の造形は、完成したビジョンが見えて作り始めるのですか?
川淵直樹:僕たちの仕事というのは、まぐれ当たりを狙う仕事なんです。同じ器を作る職人とは違い、自分の想像を超えないと作品としての意味がないのです。最初から作る作品を決めるのではなく、土があって、その土を練っているうちに段々とフォルムが見えてきて、いいところで止めるんです。揃いもの(数のある作品)も、窯に置く場所が数十センチ違っても、全く別の風合いになる。これも自分の想像より超えた作品を生み出すためのものです。今の器の風潮で勿体無いなあと思うのは、作家が同じ規格の器を求めすぎて、まぐれ当たりを見つけようとしないこと。自分を驚かさないと、作家は新しい作品を生み出しにくくなり、創造性を停滞させてしまいます。
ー カップにしてもぐい呑にしても、どれも違った存在感を持っています。
川淵直樹:カップにしてもぐい呑にしても、その瞬間のひらめきで形は変わってきます。面白いのは土が引っかかったり、やりにくいなって言う時ほど、良い作品が生まれてくるのね。だからわざと土をあまり練りこまないで使って見たりとかね(笑)
ー 今後、川淵さんはどのような器を作っていこうと思われますか?
川淵直樹:今、個展らしい個展を見てなくて、どれも器の即売場になっているよね(笑)それだったら僕は、食器に一点ものと同様の価値を入れてみようかな。例えば黄瀬戸なんかは、桃山時代の鉢としては多く残ってるけど、抹茶碗はそんなになかった、だけど明治以降の陶工たちが、抹茶碗としての黄瀬戸の価値を高めた。今度はその逆で、抹茶碗としてもなり得るぐらいの鉢なんか提案したら面白そうだよね。