京都の匠、陶芸家:瀬津義雄さんの作品に触れると「日本の美意識とは何か」を感じさせられる。50年以上も陶芸を作り続けてきた巨匠の作品は、肩肘を張らずゆっくりと語りかけてくるような佇まい。桃山陶の黄瀬戸や織部、志野などを主に制作されているが、決して伝統のやきものの写しのうつわではない。黄瀬戸にみられるやわらかな肌質やおおらかな線を奏でる口添え部分、同に至っては、どっしりとした気持ちよさに残る指跡が器を天衣無縫の境地に昇華し、手に触れると伝わる優し気な風合いは、まさに柚子手黄瀬戸という名の通り。織部をとっても京織部という名が似合うすっと織部の濃淡が現れたと思えば、器の中に活き活きとした花や草などが描かれている。使い手に卓越した技巧を見せびらかすことをせず、心の奥底につながる日本の美意識を呼び起させる器は、京都人の粋からくるものだろうか、瀬津義雄さんの器を通して日本の器を好きにならざるおえない。